研究内容

熱励起電荷の化学 ~より良い「人の」環境のために~


半導体増感型熱利用発電

半導体増感型熱利用発電は、身近な熱で発電する、薄くて軽い電池です

温暖化ガス排出量ゼロ!放射線の心配もない、天候にも左右されない、狭い国土にも対応するエネルギーソリューション。地球上のあらゆる熱で直接発電するため、SDGs、低炭素社会、エネルギー問題、資源問題とあらゆる問題に貢献でき、人類が等しくエネルギー不足に悩まなくなる社会の実現を目指します。

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ESG Tech Battle 2022 powered by NEDO、CIC会長賞受賞時のピッチ動画

https://www.youtube.com/watch?v=6OPYBCm45u8

37:00より発表,3:53:12より受賞シーン

 

技術調査に関しましては、どうぞ、こちらの公開解説記事

https://www.hyomen.org/wp-content/uploads/papers/vol5_no3/matsushita/matsushita_76.pdf

をご覧ください。また本技術の議論の場として、下記の室温発電Preprintをご利用ください

https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-384614/v1

なお最新の情報は、わたくしのtwitter

https://twitter.com/SachikoMatsush3

で発信しておりますので、そちらをご覧ください。

 

改めまして、本研究にご興味を持っていただけたこと、心より御礼申し上げます。

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 日本は世界第4位のエネルギー消費国でありながら、エネルギー自給率はたった8%です(2016年調べ)。しかもせっかく輸入してきた1次エネルギーの3分の2が排熱として捨てられています。我々は本気でこの問題に取り組んでいます。

 半導体増感型熱利用発電は、色素増感型太陽電池の光励起を熱励起に変えたものです(特許第680376号)。色素増感型太陽電池では、色素の光励起電荷により、イオンが酸化還元反応を起こし、光で発電します。この光励起電荷を、半導体の熱励起電荷に変えた時に発電するのか・・・それがこの研究の始まりでした。

 もし発電するのであれば、それは熱エネルギーを直接電気に変える電池になります。電池を地中に埋めれば地熱で発電できるようになり、国土が狭く、石油資源に乏しい、我が国にふさわしい発電所が構築できます。放射性廃棄物も出ず、天候の変動にも左右されません。

 最初に行ったのは、この熱励起電荷により、イオンの酸化還元反応が起こせるかどうかの確認でした(Mater. Horiz., 2017, 4, 649–656)。その結果、β-FeSi2と銅イオン伝導体を用いて、600℃での長期発電を確認できました。ただし、この時はイオンの酸化還元反応を確認するべく、電解液の中でのイオン移動度は非常に低いものを使用しました。

そこで原理を確認するために、増感型太陽電池の中でも半導体を使う、有機ペロブスカイト増感型太陽電池に着目しました。この有機ペロブスカイトは太陽電池材料としても有名ですが、熱で電子を生み出せる可能性があることが、計算により示されていたからです。この有機ペロブスカイトによる増感型電池を作製し、光でも熱でも発電することができるのであれば、それは半導体増感型熱利用発電の原理の明確な証明になります。実験は有機ペロブスカイトの脆弱性のため困難を極めましたが、最終的に、光でも熱でも発電を確認することができたのです(ACS Appl. Energy Mater., 2019, 2, 13–18)。さらに、硫化銀の粒子を用いても、光でも熱でも発電を確認することができました(J. Phys. Chem. C, 123, 12135-12141 (2019).

 次の問題は、「この電池は発電が終了するのか?」でした。我々は、本電池は熱流によって作動するため永久機関ではないことに確信を持っていました。一方、温度平衡による発電終了は起きうると考えていました。そこで電解質イオン量を調整でき、耐久性が比較的高い高分子電解質を使い、初めて発電の終了を確確認しました。さらに驚くべきことに、熱エネルギーにより電解質内でイオンが拡散することを利用すると、発電能力が復活することも確認できました。すなわち、熱源に埋めてスイッチをオンすれば発電し、オフすれば発電能力復活する、画期的な電池だったのです (J. Mater. Chem. A, 2019, 7, 18249-18256 )。

 さらに近年では、電子輸送層のドープ濃度を変化させることで、本増半導体感型熱利用発電では作用極のフェルミ準位が開放電圧に依存することを示しました(Chem. Lett., https://doi.org/10.1246/cl.200322)。この点が、光励起で擬フェルミ準位が形成する場合と異なります。これらのことから、我々は、励起「源」で捉えられがちなエネルギー変換に対し、励起電荷「数」で捉えることが重要ではないかと言う考えに至りました( SPIE Defense + Commercial Sensing招待講演プロシーディング)

 発電までの詳細はこちらの総説(Acc. Mater. Surf. Res. 2020, 5, 60-67.)に記載いたしましたのでご覧ください。無料ダウンロード可能です。

 また、2021年に、本発電の回復メカニズムがある程度明らかとなり、室温で発電が出来るようになりました。この結果はPreprintとして公開し、皆様からの議論を受け付けております。ぜひご利用ください(Research Square, https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-384614/v3

 

 本電池に興味を持っていただき実験を行っていただく方は、以下の2点に気を付けて下さい:

1)I-Vで発電が確認できても、材料が溶けていないことを必ず確認してください

2)クロノポテンショメトリーを取ってください。キャパシタでもI-Vで開放電圧が確認できることがありますから、放電時の電圧の時間依存を取り、プラトー領域が出ることを、初回放電・2回目以降放電で確認してください。この時、放電電流値は小さめにしてください。電流値が大きいと発電していても測定に引っかからない可能性があります

 

下の動画は2019年7月18日の記者会見で使用したものです。ラボレベル電池を4つ直列接続し、90℃に暖めることにより、液晶ディスプレイが作動します。

また、2021年のPreprintでは、三櫻工業様が撮影された夏のアスファルト上でのBluetooth通信機器作動デモも公開いたしました。

https://assets.researchsquare.com/files/rs-384614/v3/6eee804573417f1d7a50de3f.mp4

 

よく質問されることをこちらにまとめました。

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